ついにこの日がやって来た。コロナの蔓延による公演中止が3月から7月迄の5ケ月に及び、この間に團十郎襲名公演を始めとして、幾つもの楽しみな公演が中止の憂き目にあった。我が国は他国に比べ、比較的コロナを抑え込んではいるが、それでもこの有様である。我が国と二桁も感染者の数が違う国もあり、如何ばかりかと推察します。
全ての原因は、コロナ発生を半年近くも隠蔽し続けた中国共産党にある。もっと早く事実を公表し、都市封鎖(一党独裁の中国ならすぐにでも出来たはず)していれば、世界中がこんな事にはならなかった。筆者は中国の歴史的文化に大いに敬意を払うものであるが、それと一切関わりのない今の中国共産党は許し難い。我が国では批判は抑制的だが、米国では激しい中国叩きが行われている。このブログと政治は関係がないので、この話題は置くとするが、改めてお亡くなりになられた方々に、哀悼の意を表したい。
再開された歌舞伎公演。早速初日に駆けつけた。この日は一部のみ観劇。入口ではソーシャルディスタンスを保ちながら一人一人入場。チケットのもぎりも自分で行い、検温がある。中に入ると両観音仕様の筋書きが無料配布。通常の筋書きの販売はない。イヤホンガイドの貸し出しもなかった。写真で紹介した様に、桟敷席の後ろ扉が解放されており、お土産等の販売もなし。係員はマスクを着用し、携帯の電源を切る要請などを声を出さずにプラカードを掲げて案内している。感染対策に完璧はないだろうが、出来うる限りの万全な態勢を取っている様に見受けられた。
幕開き前に、愛之助による口上が場内に流れる。この日を待ち侘びていた旨を述べ、帰りは一斉退場には出来ないので、すぐに席を立たず係員の指示に従て欲しいと挨拶。全身全霊で舞台を勤める決意が語られた。録音だとは思うが、満場から大きな拍手が送られた。
幕が開くと、舞台後方の長唄鳴り物連中全員が黒いマスクをしている。見た目がいいものではないが、これも時節柄致し方なかろう。いよいよ狂言師愛之助と壱太郎が舞台下手から登場。今まで聞いた事がない位の万雷の拍手が、いつまでも続くかと思う程長く送られる。愛之助がブログで「舞台中央に座っても拍手が鳴りやまず、涙が出そうになった」と述懐していた。愛之助の姿を観た時、筆者も堪えきれず思わず涙・・・来る前からそうなりはしないかと案じてはいたが、歳を取ると涙腺が緩くなります。
その後は感想云々ではない。涙で冷静に舞台が観れず、只々ひたすら二人のイキの合った舞いに酔いしれていた。高麗屋親子や澤瀉屋バージョンに比べ、力感と云うより端正な美しさに重きを置いた『連獅子』。狂言師の間は、初日故にかまだ相手を見ながらの感もあったが、獅子の精になってからの後半は、観客がグイグイ引き込まれているのが感じられ、やはり歌舞伎は生だなぁと改めて思わされた。
僅か一時間にも満たない舞台ではあったが、久々の生歌舞伎を堪能出来て、大満足だった。その後スタッフに体調不良の方が出て、5日の三部が中止になったりした様だが、千秋楽迄、無事に興行が行われる事を願うのみである。
その他の部の感想はまた別項にて綴ります。とにかく芝居の幕が開いて、本当に良かった。役者や松竹の方々を始めとした関係者各位のご努力に、心からの敬意を表します。