fabufujiのブログ~独断と偏見の歌舞伎劇評~

自分で観た歌舞伎の感想を綴っています

横須賀芸術劇場『ラ・マンチャの男』ファイナル公演

ラ・マンチャの男』ファイナル公演を観劇して来ました。ポスターです。

 

團伊玖磨の展示コーナーがありました。自作オペラの楽譜など、貴重な展示物です。

 

これも楽しみです。

 

去年日生劇場でのファイナル公演チケットを抑えていたのですが、コロナにより無念の中止。もうあの舞台は観れないのかと思っていたところ、本当のファイナル公演が実現しました。高麗屋の体調はとても万全とは見えず、特に足腰がかなり辛そうで、共演者の支えが必要な程でした。そんな身体で、持てる力を振り絞るかの様な熱演。終盤ドン・キホーテが死の床についている場面。駆け付けた愛娘松たか子演じるアルドンザが「ドルネシア」を唄う。すると騎士の魂が蘇ったかの様にキホーテは立ち上がり、そして崩れ落ちる。その姿が役者高麗屋二重写しになり、筆者の心を揺さぶらずにはおりませんでした。当然涙腺は大崩壊。正に究極の舞台芸術、演技を超えた究極の演技でした。カーテンコールに応えた後、観客からの盛大な、そして温かい拍手に送られて、サンチョ役の駒田一の肩を借りながら舞台奥に入って行く高麗屋の姿を見て筆者は思いました。高麗屋は命を削って舞台に立っている。大げさでなく、舞台で死んでもかまわないと云う気持ちでいるのだと。我が国に高麗屋松本白鸚と云う役者が存在してくれた事、そしてその舞台に出会えた事、その全てが筆者には奇跡の様に思えるのです。であるからこそ猶更、高麗屋にはお身体くれぐれもご自愛の上、いつまでもその素晴らしい舞台姿を見せ続けて欲しいと、願わずにはおれないのです。