fabufujiのブログ~独断と偏見の歌舞伎劇評~

自分で観た歌舞伎の感想を綴っています

私が観た令和六年歌舞伎 極私的ベスト10

新年明けましておめでとうございます。

 

去年は元旦から能登半島の震災があり、おめでとうございますと云うのも憚られる状況でしたが、今年は震災の様な大災害もなく、松が明けようとしています。さて恒例となっております、筆者が観た歌舞伎の年間ベスト10を発表したいと思います。観劇の備忘録として始めた本ブログなので、この項を書く為に毎月駄文を書き綴っている様なものです。では早速令和六年の極私的歌舞伎ベスト10を発表致します。

 

まず第十位

秀山祭九月大歌舞伎より『摂州合邦辻』

九月の秀山祭は初代吉右衛門の追善として亡き二代目吉右衛門が始めた公演。いつも重厚な狂言が並び、年間でも筆者が特に楽しみにしている月です。その中で菊之助の素晴らしい玉手御前が観れた「合邦庵室の場」が十位です。

 

続いて第九位

新春浅草歌舞伎より「魚屋宗五郎」

もう観劇から一年が経ちましたが、今でも印象深い芝居。近年テレビでも超売れっ子になってあまり歌舞伎を演じる機会がない松也ですが、筆者が観た限りでは今までの松也の中ではベストでした。もっとこの優の歌舞伎が観たいです。

 

第八位・七位・六位は続けて発表します。

 

第八位

十二月大歌舞伎より『天守物語』

第七位

明治座 十一月花形歌舞伎より『一本刀土俵入』

第六位

秀山祭九月大歌舞伎より「吉野川

十二月に観たばかりなので当然印象深い大和屋と團子の『天守物語』。明治座の花形公演から中村屋兄弟の熱演が見事であった『一本刀土俵入』。そして大和屋・松緑染五郎・左近と云う大名題・花形・若手花形の三世代揃い踏みが素晴らしかった「吉野川」がランクインしました。

 

そしてベスト5の発表。

 

まず第五位

七月大歌舞伎より『裏表太閤記

亡き猿翁が創り上げた狂言を、見事令和に再現した幸四郎の去年のベスト。『勧進帳』も素晴らしかったですが、何度も観ているものなので、今年はこれをチョイスしました。最後の五人三番叟は圧巻の一言。

 

続いて第四位

十二月大歌舞伎より『盲長屋梅加賀鳶』

とても初役とは思えない、世話の味が横溢していた松緑の見事な道玄。今月は一転時代物の熊谷にも初役で挑んでいる松緑。今年もこの優の活躍からは目が離せませんね。倅左近も成長著しいのが頼もしいです。

 

いよいよベスト3の発表です!(大袈裟な)

 

第三位

 團菊祭五月大歌舞伎より『伽羅先代萩

「飯炊き」も含めてたっぷりと演じてくれた素晴らしい菊之助の政岡と、ニンにも適って迫力充分な團十郎の仁木。今年からは同い年の二人が團菊として並び立ちます。楽しみでしかない。

 

そして第二位

四月大歌舞伎より「引窓」

以前にも「綱豊卿」で素晴らしい芝居を見せてくれた高砂屋松緑が、再びタッグを組んでイキの合ったところを見せてくれました。丸本らしい、実に結構な狂言でした。またこの二人の芝居が観たいものです。

 

そして令和六年の頂点に立った(滅茶苦茶独断と偏見ですが)芝居は・・・

 

第一位

国立劇場初春歌舞伎公演より「葛の葉」

栄えある(?)一位はまだ梅枝時代の時蔵が初台で演じ、本当に素晴らしかった葛の葉。父萬壽は亡き山城屋に教わり、それが当代時蔵へと受け継がれた。観劇から一年たっても、その印象は鮮烈です。これからも時蔵には、時代物女形として令和の丸本を牽引して行って貰いたいと思っています。

 

以上が極私的令和六年の歌舞伎ベスト10です。ベスト3が何れも丸本なのは、筆者の好みが思いっきり出てしまっていますが。この他にも七之助の『お染の七役』や『鷺娘』、團十郎の『幡随長兵衛』、幸四郎の「沼津」、『勧進帳』など、印象深い芝居が幾つもありました。令和七年も三月には『仮名手本忠臣蔵』の通しがあり、八代目目菊五郎の襲名披露公演もあります。去年にも増して、多くの素晴らしい芝居が観れる事を願ってやみません。