fabufujiのブログ~独断と偏見の歌舞伎劇評~

自分で観た歌舞伎の感想を綴っています

映画 鬼平犯科帳「血闘」

 

映画鬼平犯科帳「血闘」を観てきました。筆者はCSで新鬼平の「本所・桜屋敷」も観ていますが、やはりスクリーンは迫力が違いますね。

 

配役は幸四郎の平蔵、中村ゆりのおまさ、火野正平の彦十、本宮泰風の佐嶋忠介、浅利陽介の木村忠吾、柄本時生の小野十蔵、柄本明の九平、志田未来のおりん、松本穂香のおろく、北村有起哉の甚五郎、染五郎の銕三郎と云う豪華版。芸達者が揃っているだけに、立派な時代劇になっていました。

 

幸四郎の平蔵は、播磨屋とはまた違った人間像を創り出しています。無論播磨屋の様な大きさはありませんが、あれは大名人が長い歳月をかけて創り上げたもの。幸四郎は清濁併せ呑む描線の太さを出し乍らも、播磨屋とはまた異なる色気があり、おまさが命をかけて惚れるだけのものがある立派な平蔵でありました。佇まいの美しさや、立ち回りの見事さは、踊りの名手らしいこの優独特のもの。五代目平蔵、まずは見事な船出であったと思います。

 

染五郎は若々しく一本気な銕三郎を好演。若き日のおまさに簪をプレゼントするシーンが心に残りました。どうせおろくさんに買ってきたものでしょうと拗ねるおまさに「いや、これはお前に買って来たものだ」と告げ、髪に簪をさしてやる場はしみじみとさせる実に良いシーンでした。

 

中村ゆり柄本明志田未来北村有起哉と脇の芝居も実に見事。松本穂香の美しさ、艶っぽさも印象的でした。画面も陰影があって映画ならではの美しさ。本物の手応えがあります。これは皆さん、必見ですよ。来月はまたCSで新作が放映される様なので、楽しみです。