fabufujiのブログ~独断と偏見の歌舞伎劇評~

自分で観た歌舞伎の感想を綴っています

第四回 双蝶会 国立小劇場 感想

歌昇と種之助の勉強会「双蝶会」を観劇。その感想を綴る。

 

まず『義経千本桜』から「川連法眼館の場」。狐忠信を種之助が演じる。幕開きでまず本物の忠信が出てくる。これが意外と云っては失礼だが中々良い。刀の下緒の捌き方なども堂に入っており、初役としては上々の忠信。歌昇義経も御大将としての品格があり、二度目らしいが、いい義経

 

しかし狐忠信になると苦しい。狐言葉がやはり板に付いておらず、動きも段取りをこなすだけで精一杯と云ったところ。とても親を思う情までは辿り着けてはいなかった。この大役をこなすのはやはり至難の技なのだろう。これからの精進に期待したい。脇では京妙の静御前が流石の出来ではあたったが、科白が入っておらず、はらはらさせられる部分があった。

 

続いて『積恋雪関扉』。歌昇が初役で関守関兵衛実は大伴黒主を勤める。対照的にこちらは初役とは思えない大出来だった。元々歌昇は近年腕を上げてきた感があり、個人的には20代の立役では一番の優だと思っているが、それが図らずも実証された形。

 

せり上がりの出から古怪な姿で、唸らされる。体は大きくない人なのに、大きく見える。この若さで素晴らしい。そして児太郎の小町がまたいい。花道脇で観たが、その気品・優雅さ、初役としては申し分ない小町。この優を見直した。これなら秀山祭の雪姫も楽しみだ。

 

種之助の宗貞と三人での「恋じゃあるもの」も全員初役とは思えないいい踊りで、たっぷり堪能した。芸の格が揃っているので、観ていて非常に心地よい。久しく歌舞伎座で観ていないので、近々また観たいものだ。

 

後半大伴黒主になってからは多少硬さと力みも見られたが、見得もきっちりきまって、黒主の大きさが良く出ている。児太郎の墨染とのカラミも二人のイキがぴったり合って大いに盛り上がる。最後の決まりも見事で、この大作舞踊劇をこの若さでここまで出来る歌昇の力量は素晴らしい。児太郎ともども大手柄だった。

 

いつか歌舞伎座で観てみたい、そう思わせてくれた『関扉』。客席もほぼ満員で、素晴らしい播磨屋兄弟の勉強会だった。