fabufujiのブログ~独断と偏見の歌舞伎劇評~

自分で観た歌舞伎の感想を綴っています

高麗屋三代襲名(昼の部)

 今年から、自分の備忘録として観劇した歌舞伎の感想を綴っていきたいと思います。

 

今年の初芝居は歌舞伎座百三十年「壽 初春大歌舞伎」と銘打って高麗屋三代の同時襲名。新年早々本当にめでたい。

 

幕開きは『箱根霊験誓仇討』。急遽役の変更があった愛之助の滝口上野が、敵役の大きさを出していてまず見もの。もう一役の筆助はニンにある役なので流石の安定感。

この幕では何と云っても七之助の初花が素晴らしい。最初の貞女ぶりといい、霊になってからのその雰囲気といい、上出来だった。勘九郎の勝五郎は取り立てての事はなかったが、こちらもニンにある役なので、安心して観ていられた。

 

豪華メンバーによる舞踊『七福神』でお祝いムードを盛り上げた後に、いよいよ菅原伝授手習鑑から『車引』と『寺子屋』。

 

『車引』はいかにも歌舞伎の荒事らしく、花形の中村屋兄弟と新幸四郎が手一杯の出来。そんなに身長が変らないはずの中村屋兄弟が、梅王丸・桜丸になるとかなり身体の大きさが違って見えるところが芸の素晴らしさ。勘九郎の梅王はニンにはない役だと思うが、その大きさ・力強さは流石の一言。七之助の桜丸も本来女形のこの人らしく、品の良さを見せる。そしてお待ちかね新幸四郎の松王丸の登場。場内から降る様な「高麗屋!」の大向こうに後押しされるかの様に、出から力感たっぷりの松王。この人の課題であるところの声も良く通って、まずは上々の新幸四郎のスタートとなった。3人揃っての決まりも、歌舞伎座の大舞台に相応しい一幅の絵だった。

 

昼の部最後は大真打登場の『寺子屋』。歌舞伎座さよなら公演でも最後に演じた、云わずと知れた新白鸚十八番。しかも今回は源蔵に梅玉、戸浪に雀右衛門、涎くりに猿之助、千代に魁春、春藤玄蕃に左團次、園生の前に藤十郎と云う、古は知らず少なくとも平成最強のメンバーによる大一座。最高としか云い様のない舞台に仕上がった。

 

白鸚は、出からその古怪な大きさは比類ない。義太夫味もたっぷりで、相対する梅玉とは対照的な芸風。同じく義太夫味溢れる仁左衛門の源蔵との方が、相性としてはいいとは思うが、この両者の好対照ぶりはこれはこれで見もの。元来台詞まわしには天性の上手さがある優だが、それに加え近年の白鸚は、台詞のない場面での、佇まいだけでその役の性根を表現する稀有な存在感を備えてきている。歌舞伎芸としては、最高の境地に上り詰めているのではないか。共演者の中では戸浪の雀右衛門が、情愛こぼれるばかりの名演で脇を締めていたのが印象深い。いずれにしても、新年早々最高の舞台を観劇できて、それこそ感激だった。

 

夜の部はまた別項で。